脳卒中(脳血管障害)について
私たちのクリニックでは多くの脳卒中の患者さんを定期的にみています。 MRI、MRA(MRによる脳血管撮影)、CT、CTA(CTによる脳血管撮影)を行うことができますので、 脳卒中の患者さんに対して定期的に検査をし、お薬を処方しながら、またリハビリテーションをしながら診療しています。
その脳卒中について以下にお話してみましょう。 脳卒中とは脳の血管の病気すべてを指しています。 大きく分けますと以下のようになります。
出血する病気
- 脳出血
- 脳の小さな血管が破れて脳の中に出血が起こります。
- くも膜下出血
- 多くのケースは脳動脈瘤が破裂して脳の表面に出血が広がります。
血管がつまる病気
- 脳梗塞
- 脳の血管がつまって起こります。
- 一過性脳虚血発作
- 一時的に脳の血流が途絶えて症状が出ますが、再開通してまたもとにもどります。
このような病気の方は以下のような症状が出て、後遺障害として残ることがあります。
脳卒中の症状
脳卒中の症状は様々ですが、共通している特徴は、突然生じることです。 脳梗塞と脳出血は、脳の一部の働きを突然失うため、症状がだいたい共通しており、くも膜下出血の症状とは異なります。
脳梗塞と脳出血の代表的症状で、最も多いのは片麻痺で、片方の手・足が突然に動かなくなります。 同じ部位の感覚が鈍くなったり、しびれが生じたりすることもあります。 両側の指先が徐々に、あるいは時々、しびれるような場合は、通常脳卒中の症状ではありません。
次に多いのは、言語障害です。 すなわち、突然、呂律が回らなくなったり、言葉が出なくなったり、ときに相手の言葉を理解できなくなります。
また、失調と言って、手足の麻痺はないのに、急に足元がふらついて、 立ったり、歩いたりできなることもあります。
目の症状が生じることもあります。 例えば、突然に片目の視力がなくなったり、視野の一部が見えなくなったり、物が二重に見えたりします。 これらの症状に加えて、意識が悪くなることもあります。 軽い場合は、なんとなくぼんやりしている、という印象ですが、 重症の場合は、強く呼びかけたり、つねったりしても、目を閉じたままで反応がありません。
次に、くも膜下出血の症状ですが、今までに経験したことのない激しい頭痛が特徴的です。 重症の場合は意識障害も生じます。 頭痛の強さは発症時にピークに達し、その後も痛みは持続します。 同時に、嘔吐することもしばしばです。 「最近なんとなく頭が痛い」といったような場合は、くも膜下出血の典型的な症状ではありません。 以上、脳卒中の症状について、簡単に説明致しました。 脳卒中が疑わしい場合はすぐに受診してください。
リハビリテーションについて
当院は患者さんによっては、器械(マシン)を使ったリハビリテーションを行っています。 これをパワーリハビリテーションといいます。 パワーリハビリテーションは、老化や器質的障害により低下した身体的・心理的活動性を回復させ、 自立性の向上と生活の質(QOL[クオリティ・オブ・ライフ])の高い生活への復帰を目指すリハビリテーションの新しい手法です。 日本でリハビリの専門職の手によって開発された、マシントレーニングを中心とした運動プログラムであり、 各地で目覚ましい成果を上げています。
パワーリハビリテーションは、筋力強化を目的としたプログラムではありません。 パワーリハビリテーションは、マシントレーニングを軽負荷で行い、全身各部の使っていない筋を動かします。 それにより、「すたすたと歩けるようになった」というような動作性・体力の改善、 「外出するようになった」といった心理的活動性の改善が得られます。
パワーリハビリテーションは運動によるリスクはほとんどないといえます。 身体の動きが良くなった、疲れにくくなったという動作・体力の改善は、 「自己認識・自己概念」に変化をもたらし、自信もついてきます。 自信がつくことにより、行動の変化も生まれてきます。
また、パワーリハビリテーションのような軽い有酸素運動の時に、神経から放出される物質には、 「うつの改善」など心理的効果も発揮します。 パワーリハビリテーション実施後に趣味であった社交ダンスや登山、絵画を再び行うようになったなど、 数々の行動変容が報告されています。
梅ノ辻クリニックの脳卒中診療体制について
梅ノ辻クリニックは無床のクリニックですので、急性期の脳卒中で入院を必要とされる患者さんは、他の施設にお願いしています。 しかし、急性期をすぎて病状が落ち着いた方は、投薬やリハビリテーションを行いながら外来で治療を行うことができます。 またケアマネージャーがいて、介護保険の相談にものることができますので、そのような方はぜひご相談ください。 また経過中に病状が悪くなって入院が必要となった方は、 関連病院として総合病院の「いずみの病院」がありますので、 ご紹介できます。
当院は以前、当クリニックの前身としての梅ノ辻病院、長尾病院として手術を中心に脳卒中の診療を行ってきました。 現在、入院治療はできませんが、入院を必要としない状態の脳卒中の患者さんを多く診療しています。 ぜひご相談ください。