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「耳鳴り」への新しい考え方
患者さんにとっても医師にとっても「仕方がない」とあきらめさせてしまう、無力感ばかりがつのる症状として「耳鳴り」があります。
耳鳴りはとても厄介な症状です。 昼も夜もずっと鳴り続けて気持ちも休まらず、つらいために耳鼻咽喉科や、脳神経外科に行って検査をしてもらいますが、 ほとんどの方は異常がないと言われ、果ては一生治らない、といわれてあきらめている人がどれほど多いでしょうか。
私も耳鳴りの患者さんを診るたびに、そのような気持ちになっていましたが、 病気が「呼びかけ」である、という意味があることを学んでから、 「耳鳴り」の患者さんに今まで以上に真剣に向かうようになりました。
「呼びかけ」とは「あなたの生活を見直してみては?」ということなのです。
診察をしている中で明らかになってきたことは「耳鳴り」を訴える患者さんには、 すべての方ではありませんが、多くの方にある共通点が見られることでした。
それは、まず第一に過剰なストレスです。 「耳鳴り」が始まったころを振り返っていただくと、ほとんどの方に、 とても大きなストレスを感じていたことがあることがわかってきました。 しかもそのストレスにはある共通した傾向が見られるのです。
それは「言いたいことが言えない」「我慢している」という状況が高じて、悶々としている、というストレスなのです。 「人間関係における不満」という言葉が適切でしょうか。 それは嫁と姑の関係として、また上司と部下の関係として、また近所の方との関わりにおいて、など状況はさまざまですが、 「過剰なストレス」という共通した心的風景があります。 このような生活上の問題が、「耳鳴り」という症状を作り出している。 そして「この不満な状況を何とかしなさい」と、この方に「耳鳴り」が呼びかけているのだ、と考えるのです。
「耳鳴り」が多くの方にとって、このようなストレスが原因であることにまず間違いはない、と感じていたころ、
1年以上「耳鳴り」が続いているある女性患者さんに出会い、その方の状況をお聞きしたところ、
上司に対する不満が渦巻いている状態でした。
その不満と耳鳴りの発症が一致していました。
そこで何回かの診察後、不満がうまく解決できるようにアドバイスしました。
しかし上司にはなかなか言いたいことを言えるものではありません。
言えないからこそ、今の状況にあるわけですから。
そこでその方は工夫して上司に手紙を書くようにされました。
勇気をもってそうしたところ、本当に気持ちがすっきりとされ、
1年以上悩んでいた耳鳴りが、その後うそのように治ってしまったのです。
私も驚きました。
「病気が『呼びかけ』であり、『脱皮新生のチャンス』」とは、こういうことだ、と実感したしだいです。
ここで大切なことは、その方が本当に心の底から、その状況から「癒される」ということだと思います。 言いたいことを言ったために喧嘩になっては元も子もありません。 そのためには賢い工夫が必要です。 今まで作ってきた人間関係を乗り越える勇気が必要です。 それを乗り越えるという「新しい自分」を生み出すために、「耳鳴り」は現れたのです。
これまで原因がなかなか分からず、また薬ではなかなか治らない、一生治らないと言われてきた「耳鳴り」。 勇気を持って「あなたが変わる」ことによって、ぜひその挑戦を始めてみませんか。